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日本の稲作 ―そのこころと伝統―

<解説>
 お米のひと粒ひと粒に神様が宿っておられる、そういって昔から日本人は米を大切にしてきた。それほど日本人にとって米は神聖な、貴重な生命の糧であった。
 このことはまた、稲をつくることがどんなに苦労な仕事であったかを示している。
 胸まで泥につかりながら苗を植える富山のアワラ田の田植なども、厳しい自然と斗いながら稲をつくった昔の農民の苦渋をひしひしと思わせるのである。
 稲作は天候や病虫害など、自然の条件に大きく左右される。丹精こめて植えた稲も、日本列島をしばしば襲う災害、中でも長雨や異常低温、ウンカの大発生などによって、致命的な打撃を受けることも決して少なくなかった。 日本の稲作にとって自然は絶村であり、 人力の及ばない神様だったのである。
 全国各地に今も伝承されている稲作に関するさまざまな祭りは、自然の脅威に直面しながら稲を作る農民たちの豊作を願う儀式であり、田の神を田に迎えて苗の無事を祈る行事なのである。
 この映画の主なる舞台江刺地方の、田植えのしぐさをまねる庭田植などは豊作を析願する最も素朴な表現であろう。
 日本人の生活と文化に深く根をおろしている数々の稲作の儀礼は、とりもなおさず我々の祖先の、心からなる祈りのあらわれであり、言い知れぬ苦難を物語っているのである。
 この映画は約一年半の長期にわたり、日本全国を北から南へと取材し製作したものです。


文部省特選
芸術祭最優秀賞
教育映画祭文部大臣賞

文化庁
英映画社
カラー42分

製作 高橋銀三郎
演出 青山通春
撮影 宮下英一、長井貢、千葉寛
音楽 真鍋理一郎
解説 竹内三郎
録音 赤坂修一
製作担当 瀧川正年