父と息子とその姉と
父と息子とその姉と
富士山が問近かに見える東海のある中都市。 内村信吾は息子の浩二とその姉の淑子と三人暮しである。信吾は長く独身で通し、娘の淑子が主婦代りを勤めて来たが、淑子も嫁ぐことになっている。
ある日、浩二が街で老婦人が倒れるところにさしかかり、丁度一緒にいたガールフレンドの貞子と病院まで付添う出来事にぶつかった。 この老婦人の身元は不明で、九州から東京までの切符があって、何かの用事でこの町に途中下車したらしい。小さな女の子と男の子と一緒に撮ったおそらく若い頃のと思われる古い写真を一枚持っていた。貞子はこの写真を見て、 淑子のおもかげを感じた。 そして推理をはたらかして、 或は? というのである。浩二もそう言われると或はと真剣に考えるようになった。
老婦人の意識が回復して、田中千代という名で、九州のある会社の賄婦を勤め、今度東京の寮に転勤になるところとわかったが、何故この町に下車したかは言わなかった。
浩二は束京まで行って調べたりして、 この人は母親であるとの確信を持つようになリ、 “お母さん浩二です” と名乗るか、 老婦人は否定しつづけるのであった。
信吾は子供達が母親のことに触れるのを嫌った。幼い子を置いて去った妻。何遍か帰るよ うに頼んで見ても、絶対に帰らぬと言い切った妻。 頼りない夫婦の愛情に無常さえ感じ独身で通して来た自分を、 初めて子供たちに語るのであった。
しかし浩二も、 お互に意地を張っている時ではない母を許せと、 父をしきりに説き、遂に親子三人は病院に、母を見舞うのであった。
貯蓄増強中央委員会
英映画社
企画 | 高橋銀三郎 |
脚本 | 知切光歳 |
監督 | 森園忠 |
撮影 | 板橋重夫 |
キャスト | 内村信吾…日野道夫 娘 淑子…高田敏江 弟 浩二…山本勝 貞子…滝口恵子 早川…鈴木瑞穂 千代…戸川暁子 隣のおかみさん…日岸喜美子 貞子の知りあいの婦人…大和屋幸子 早川の友人…高橋清佑 |