津軽の子ら
津軽の子ら
―北国の美しい自然・厳しい自然 希望にもえる子どもたちの美しい心―<あらすじ>
弘は中学二年生、ラジオが大好きである。最近は同級生の泉田や、小林・清水などと金を出し合って、高感度スーパーの受信機を組立てる計画を進めている。
弘は中学二年生、ラジオが大好きである。最近は同級生の泉田や、小林・清水などと金を出し合って、高感度スーパーの受信機を組立てる計画を進めている。
資金は勿論四人がそれぞれ小遣いをためて持ち寄ろうと言うのだが、困った事に泉田だけはどうしても小遣いが貰らえなかった。泉田の父は、泉田が畑を手伝っても、子どもが家のために働くのは当然だというのである。泉田はみんなからだらしがないと責められ、遂に仲間から脱落してしまった。
それを知った弘の父は、泉田の家では昨年リンゴが不作で苦しんだ事、弘たちが仲間の友情に欠けている事などをあげて弘を叱った、そして今では特産物として有名な、この津軽地方のリンゴも、先祖の代から沢山の人々が苦労し抜いて育て、来たものである事を静かに語って聞かせた。
みんなは何とかして泉田を一緒にひき入れてラジオを作りたかった。みんなでやれるアルバイトでもあれば問題は解決する。弘は浜の方からリンゴ園を手伝いに来ていた伯母さんに相談して、夏休みに伯母さんとこへみんなでイカ干しの手伝いに行き、小遣いを貰うことを交渉する。
夏休みが来る、仲違いしていた泉田ともやっと仲直りが出来て、四人はそろって伯母さんの家に出かける。そして力一杯楽しく働いてきた。弘たちにとっては、得難い貴重な経験であった。
そんなある日、弘の母が新聞の投書に感激して、弘や父の所に持って来て読ませる。それはある出稼ぎ農民の投書で、出稼ぎ先である日、誰か知らない善意の人がくれたものだといって、子どもから200円のお金を送って来た。その時、その人は他人に騙されて苦境にあり、働く気もなくなっていたが、その200円を見ているうちに、再び働く気力を取り戻したというものであった。たった200円でと感心する父・弘も感ずるところがあった。 しかしこの200円、実は弘の弟の徹(小学二年生)が、気の毒な女の子の家にそっと置いて来たものだった。勿論誰も知らない、また徹にとっても無心の行為だったのだ。
見渡す限りのリンゴ畑に、まっ赤なリンゴが熟す頃、弘たちのラジオの資金もやっと出来た。
リンゴをかじりながら部品を買いに行く相談をしている時、傍のポータブルラジオがイカ釣り漁船遭難のニュースを伝えた。三人死亡・八人行方不明……しかも伯母さんとこの近くである。
暗然とした四人は、結局ラジオを作る気にもなれず、識論の末折角ためた金を、遭難者の遺族に寄附してしまう。
冬になったが結局ラジオは出来なかった。弘は残念で仕方がない。ラジオを作れば良かったと思うし、またあれで良かったのだとも思う、父に相談しても父はにやっと笑うだけで何も言わない。そして今年も鉄道の雪かきに通っている。
そんな所へ伯母さんから弘に手紙が来た。偶然役場で弘たちが寄附した事を知ったのだった。
そして文面には村の状態や、人々の暮らしを伝え、弘たちに深く感謝してあった。弘たちは自分たちの行為に自信を持つと同時に、再びラジオを作る事を誓い合うのだった。
文部省特選
貯蓄増強中央委員会
英映画社
カラー39分
製作 | 高橋銀三郎 |
原作 | 松本英二郎 |
脚本 | 青山通春 |
演出 | 青山通春、長井博 |
撮影 | 木塚誠一、宮下英一、長井貢 |
照明 | 浅見良二 |
音楽 | 小沢直与志 |
製作担当 | 瀧川正年 |
録音 | 東京スタジオセンター |
現像 | 東洋現像所 |