北ぐにのとも子
北ぐにのとも子
<ものがたり>
北海道小樽市の冬。今夜も総合病院で老人達の看病をする井上とも子は、まだ17才。看護婦養成所を出たばかり。
積丹半島の小さな牧場に育った彼女は、きびしい日々の生活の中で、年老いた祖母をいたわり、 大切にしながら働く父母を見て育った。 そのくせ彼女が物心つく頃の一家は、牧場を近代酪農に切りかえる為の一番苦しい時期で、父や母は子どもたちには、経済的にも心理的にもきびしかった。
甘え盛りのとも子たちの淋しきを、慰めいたわってくれたのはおばあちゃん。 だからとも子はおばあちゃんの為なら、 どんな事でもしてあげたいと思うようになった。
中学だけで看護婦になる決心をし今の職場を選んだのも、くるしい生活の中で胸をはって働き、祖母を大切にする両親の生活から、人が人として働く事の本当の意味と、年寄りの面倒をみ、世話 をするのは、人が人として生きる為の当然の務めだと、彼女は彼女なりに学んだからだ。
甘え盛りのとも子たちの淋しきを、慰めいたわってくれたのはおばあちゃん。 だからとも子はおばあちゃんの為なら、 どんな事でもしてあげたいと思うようになった。
中学だけで看護婦になる決心をし今の職場を選んだのも、くるしい生活の中で胸をはって働き、祖母を大切にする両親の生活から、人が人として働く事の本当の意味と、年寄りの面倒をみ、世話 をするのは、人が人として生きる為の当然の務めだと、彼女は彼女なりに学んだからだ。
併し、今此の病院で接する多くの老人達の生活は、あまりにも淋しい。貧しく退院しても行き場のない人。豊かなのに自分から老人ホームに入ろうとする人。肉親からの手紙一つ来ず淋しさを施設の子らとの文通でまぎらわす老人、等々。疎外され、孤独なその姿に、とも子はとまどい、泣き、時には怒りさえ感じ、悩む。
が、その喜びや悲しみの中から、彼女は今、老人達が必死に求めているものに気付きはじめてい る。 それは接する人の真心。そして誠意なのだと―。そのとも子はまだ真赤な顔の17才。今夜も心の中で、故郷の祖母に、語りかけるのだ。 「いつまでも長生きしてね。 いつまでも、 いつまでも元気でいてね……」 と。
文部省特選
教育映画祭文部大臣賞
英映画社
製作 | 高橋銀三郎 |
脚本演出 | 酒井修 |
撮影 | 渡辺勇 |
照明 | 徳永忠 |
音楽 | 小沢直与志 |
録音 | 赤坂修一 |
製作担当 | 瀧川正年 |
キャスト | 山内三砂江、本間文子、吉川満子、岡崎夏子、和沢昌治、鶴丸睦彦 |