嫁ぐ我が子に


嫁 ぐ我が子に
<ものがたり>
長野県松本市に住む主婦、伊東和子にとって、現在の幸せは 長い苦労の末やっと手にしたかけ替えのない生活だ。その平穏にふと波立ちを起こしたのが急にもち上った長女の結婚話― 。
長女の靖子はまだ20才になったばかり。職場で知り合った青年との恋愛に気付いたのはつい最近の事だ。
嫁がせるにしても、せめてもう少し世の中がわかってからにしてほしいと母は願う。が青年の転勤を間近かにして、靖子は結婚をあせり、父母の言葉に耳をかそうともしなかった。
思案にくれていた和子は、夫の順平にすゝめられ、靖子をつれて追憶の旅に出た。
その旅で母と娘がたどった追憶とは― ― 。
和子夫婦が結ばれたのは22年前の北海道の炭坑町。幸せだった。しかしその幸せもやがて起ったエネルギー革命の嵐の中で、 あっという間に消え去っていった。
閉山された炭坑をあとに、東京へ出た夫婦を待っていたのは大都会の厳しい生活――。時には追いつめられ、死を思う事さえあった。しかし夫婦は必死に生活を立て直した。
今は廃虚となったかつての炭住街、10数年のうちにすっかり変った東京の下町― ― 。そこには苦難にみちた一家の歴史がきざみこまれていた。
『長い夫婦の歴史には、きっと苦しい、どうにもならない時 もある。そんな時こそ、支えあい、力になりあえる夫婦の愛情、 それを育てようという気構えが、貴女たち2 人の場合にもなければならないと思うの』当時のことをふりかえりながら語る和子。それは本当の夫婦の愛情とは何か、結婚の意味は何かを問いかける言葉であった。
母の愛が靖子をあたゝかく包んだ。
『結婚は、もう少しいろいろなことを勉強してからにする』
旅行から帰って靖子は明るく母に告げた。
そんな娘に、和子は旅が決して無駄ではなかったと思う。そしてこれからも激しく移り変り、社会不安の多い世相であればこそ、恋愛や結婚、そして家庭について、しっかりした考え方を持ってほしいと思う。
やがて嫁ぐわが子に、和子は心からそれを祈るのだった。
文部省特選
教育映画祭文部大臣賞
英映画社
| 製作 | 高橋銀三郎 |
| 脚本演出 | 酒井修 |
| 撮影 | 渡辺勇、千葉寛 |
| 照明 | 徳永忠 |
| 音楽 | 小沢直与志 |
| 録音 | 木村勝己 |
| 製作担当 | 長井貢 |
| 現像 | 東洋現像所 |
| キャスト | 小田切みき、可知靖之、四方正美、中村瀇二、大山貴子、望月太郎 |

