希望の船

カテゴリ:

希望の船

<内容>
 瀬田信子は、長男の高校3年の恵一を学校へ送り出すと、自分も荷物を纏めて家を出た。瀬田家は、大分県国東半島の港を碇汕地にする190屯の貨物船「香徳丸」の船主である。香徳丸の船長が病気のため、船長資格を持っている信子が代りにまた船に乗ることになった。夫の貞夫は機関長で、信子が操縦する香徳丸は港を出航した。
 昭和33年頃、信子は当時、瀬戸内海を石炭輸送する木造機帆船の機関夫として働いていた貞夫と結婚した。船は職場であり、又住む家でもあった。
 船上生活者の毎日は、陸の人には想像もつかない苛酷なものであった。数年の間に、長女の増子、次女の純子、長男の恵一が生まれた。シケに会い家族もろとも海底の藻屑と消えるような恐ろしい目に何度か会い、子供の養育のためもあって、長女と次女を人に頼んで陸へあげた。夫婦の切なる望みは、小さくても自分の船を持ち、ボロ家でも陸に家を持つことであった。
 その頃、貞夫の誠実な人柄を認めていた先輩が、機帆船の購入資金を無利子無担保で貨して呉れ、瀬田夫婦は機帆船の船主になった。昭和40年頃、我が国は高度経済成長時代に入った。そのため、零細海運業者の協業化が進められ、瀬田夫婦は清水の舞台から飛び降りる気持で、大型貨物船の建造に着手した。昭和46年、5千万円近い建造資金を銀行から信用貸しで借り受ける事が出来、「香徳丸」は進水した。やっと夫婦の苦労が実って、信子も陸にあがって子供の養育に専念出来る事になったのも束の間、船員がサラリーマンになってしまい、代りの船員が見つかるまでの半年を信子はまた、中学・小学生の3人の子供を家に残して香徳丸での船上生活を余儀 なくされた。
 3人の子供は両親の留守を守り、母の家計簿を下敷にして共同生活を始めた。恵一が子供心にも船乗りになって家の後を継ぐ決意をするなど、あの時期が瀬田家の今日の幸せを築いた試練の時であったと、今にして信子は思うのだった。
 今、長女は大学、次女は会社勤め、船員の資格もとった恵一は高校3年生。しかし、信子はなにかと船に乗る事が多く、家族5人が一つ家に集まるのは盆か正月しかない。今年も盆が来て、貞夫もやっと家に帰った。両親は成長した子供達の楽しい語らいに目をうるませる。来年は恵一が香徳丸の船員となる。貞夫の感激は又ひとしおであった。
 昔の船上生活を偲ぼうと、家族5人は香徳丸に乗って瀬戸内を走った。母が船長、父が機関長、船員の恵一が操縦する香徳丸は、新たな希望に燃えて瀬戸内海の波を切って進んだ。


貯蓄増強中央委員会
英映画社
カラー35分

製作 服部悌三郎、長井貢
脚本・演出 堀内甲
撮影 江連高元
照明 平野清久
編集 近藤光雄
音楽 青山八郎
美術 川崎軍二
記録 藤沢すみ子
現像 東洋現像所
録音 (株)録音処
出演 原知佐子前田昌明杉山とく子剛達人中野今日子片山由美子手塚学、川野真樹子、宮沢奈穂美、宇山勝樹

京都 洛中洛外

カテゴリ:

京都 洛中洛外

<製作意図>
 千年の都、京都には、今でも歴史的な建造物や年中行事、そして日常生活の中に伝統文化が生き続けている。 この「町と歴史シリーズ」第二作は、現在の京都の町のルーツをたずね、その歴史や伝統・文化が千年を経た今日の京都の町にどのように生きているかを探ろうとするものである。特に応仁〜文明の乱で焦土と化した京都の町を復興し、王朝文化を新しく蘇えらせた人々――町衆に視点を向けているのがこの映画の特色である。


町と記録シリーズ②
講談社
英映画社
カラー29分

監修 京都市史編纂所
企画
製作
野間惟道
高橋銀三郎
脚本
演出
山添哲
撮影 廣内捷彦
照明 岡本健一
音楽 松村禎三
解説 荒川修
効果 小森護雄
録音 甲藤勇
演出助手 鈴木康敬
撮影助手 小林治
製作担当 宮下英一、内海穂高
現像 東洋現像所
協力 池坊総務所
上杉家管理事務所
梅沢記念館
裏千家総本部
岡山美術館
祇園祭山鉾連合会
北野天満宮
教王護国寺(東寺)
京都観世会
京都国立博物館
車折神社
建仁寺
慈照寺(銀閣寺)
大悲閣千光寺
中央公論社
東京国立博物館
西本願寺
平安神宮
八坂神社
六波羅蜜寺

戸隠の四季

カテゴリ:

戸隠の四季

<製作意図>
 長野県・戸隠は観光開発による俗化や自然破壊を免れている数少ない地域である。その神話や伝説が今も肌に感じられるような四季の自然と、素朴な民俗を紹介する中で、私たちがいま、生活環境の中から急速に失ないつつある沢山の貴重なものを再認 識できればと考える。
<内容>
 長野県の北部を形成する山岳・高原地帯の中心に戸隠村がある。厳寒の二月、暁暗の経無山山頂にカメラを立てて、対面する戸隠連峯をみつめている。やがて戸隠連峯の壮大な夜明けのショウが始まった…………。
 冬の戸隠は、やはりスキーに代表される現代的なウインターリゾートだ。ここではホテル・ロッジ・レストランなども広い疎林地帯に点在して、それぞれが個性的ムードをもっているのが印象的だ。若者たちは、雪の峨峨とした連山を背景に、長い冬を爽快な青春の喜びにひたる。しかし華やかな雪の祭典が終り、大地が白いベールを脱ぎ始めると、高原にはカタクリ・キクザキー輪草・リユウキンカ・水バショウが咲き昔のままの自然がかえってくる。
 戸隠山に神話の神々が祭られたのは遠く二千年も前といわれる、平安時代には天台真言の山岳密教が入り、三大霊場の一つとして大いに栄えた。
 村は宝光社、中社、奥社の三社からなる戸隠神社を中心に展開している。祭神はみな天の岩戸神話で活躍する神さまである。村の旅館は戸隠三千坊といわれた頃から続く由緒ある宿坊が多く、その堂々たる構えがここ独特の雰囲気をつくる。
 数百年も続くお神楽や祭、行事がよく保存されており、特産の根曲り竹の細工物や蕎麦など、村人の人情は今も淳朴そのものである。
 戸隠の春は目を洗うばかりの新緑と、全国一数の多い野鳥。飯銅山、大座法師池、 森林植物園と景勝の場はつきない。
 夏はかつての修験者を偲ばせるスリリングな戸隠山登山やキャンピングなどで賑わう。
 秋、錦繍に飾られた山野に、人びとは伝説の美しい女性・紅葉を思いだす。能や歌舞伎で有名な紅葉狩の主舞台は実は戸隠の荒倉山一帯なのだ。地名や遺跡にそのロマンがもつ妖しい雰囲気が色濃く漂っている。 こうして戸隠の四季はあざやかな転換をみせながらめぐってゆく…………。


長野県戸隠村観光協会
英映画社
カラー25分

監督:千石秀夫

このページのトップヘ

見出し画像
×