カテゴリ:

山かげに生きる人たち

 ある地方の山奥、福島仁作の一家は、炭を焼いて生計をたてている。稼ぎ手はスエと二人。夫婦は木を切り、炭を焼き、 けわしい坂道を部落まで炭を出し事業主の旦那から代償に貰った、米、味噌、塩魚などを背負って山に帰る。そんな暮らしである。
 次男の作次(小学校三年生)は、やはり近所で炭を焼く、樺太引揚者の正平の家の子供、さわ子と仲良し。母が病気で修学旅行に行けないさわ子に、作次は秘密の場所を教えて、慰さめる。
 作次の姉、のぶ江(小学六年生)は版画が上手で、県のコンクールに入賞し、遠くの町まで賞を貰いに行く事になる。スエはのぶ江の晴着にと、ワンピ一スを買って来るが、それがもとで夫婦喧嘩になるが、やがて、それも収まり、のぶ江は、スエや先生と、町へ行く。楽しい一日――。しかし、偶然、正平が、棺桶を背負って火葬場に急ぐ姿に出会う。さわ子がいつも守りをしていた弟の安男が急病で、町の病院まで来たときにはこと切れていたのだ。正平は「あの子は、これだけしか命っコ、貰って来なかったんだべ」と嘆く。
 一方、仁作の家でも、炭焼きの唯一の資本である窯が落ち、家の不幸を救うため少しでも足しにしようと思った作次が、岩魚とりをして、熱を出し肺炎を起してしまう。しかし、医師や分校の先生や、トラックの運転手の努力で、辛うじて救われる。
 正平の家は、働き手の母は身体が悪く、子供にも死なれ、経済的に行き詰って、さらに奥の山に流れて行く事になる。わびしい送別の宴が仁作の家で開かれる。
 正平は、樺太にいた頃のよき時代を思い浮べながら、ぬきさしならぬ炭焼きのくらしの苦しさを嘆く。
 出発の日、家財道具一切を背負った正平一家は、分校で、先生や小供たち一同に別れを告げる。
 さわ子は、作次やのぶ江が呼ぶ声を背に、しょんぽり駆け去って行く。
 そして、今日も仁作は、そんな炭焼きのきびしい暮らしを一身に背負ったように、たくましい顔に汗を流し乍ら炭窯に立ち向っている。


文部省特選
東京都教育委員会準特選
第16回芸術祭賞
1961年教育映画祭技能賞
第16回毎日映画コンクール金賞
第8回東京都教育映画コンクール金賞
昭和36年度キネマ旬報ベスト・テン第2位

厚生省
英映画社
白黒50分

製作 高橋銀三郎
西岡豊
脚本 西岡豊、青山通春
監督 青山通春
撮影 黒田清己
照明 内藤伊三郎
美術 阿部三郎
音楽 林光
効果 大野松雄
編集 宮森みゆり
助監督 島田耕
製作主任 滝川正年
出演 福島仁作…加藤忠
スエ…真木小苗
のぶ江…小原孝子
作次…高橋和雄
山田正平…和沢昌治
かつ…野辺かおる
さわ子…杉田和子
高沢先生…森幹太
医者…永井玄哉
看護婦…石川敬子
郵便配達…陶隆