
カテゴリ:劇
陽のあたる家族


陽のあたる家族
<内容> 中学2年生になる小田明はギターが大好きで、毎日ギターばかり弾いていて母を心配させている。しかし今持っているギターは初心者用の安物で、もう少し良い音のするギターが欲しくてしかたがない。だが父親は南部鉄器の鋳物職人で、腕は確かだが金儲けは決して上手ではないし、今まで共稼ぎをしていた母も失業している状態でおいそれと5万円も6万円もするギターは買って貰えない、友達の小林なんか、10万円もするギターを持ってるし、ステレオも買って貰ったという、何だ5万や6万のギター位いと思う。
そんな不安定な明を心配した祖母のきよは父親や母親と相談して、明を老人会の慰安会に引張り出す事を考える、慰安会で明に得意のギターを弾かせようというのである。明はギターで民謡や演歌を弾くことも出来ず年寄り達の喜ぶものなど出来ないというが、結局、妹の典子たちも一緒に行 って明の伴奏で唱歌を歌うことになる。
そして当日、公民館の広間に集った数十名の老人たちは、明のギターの伴奏で精一杯うたをうたった。心を込めて一心にギターを弾く明、精一杯声をはり上げて歌う老人たち。その感動は静かに老人たちから明に、明から老人たちにと伝わり、盛大な拍手のうちに終った。明は老人たちが思いもかけず、自分たちの音楽に感動してくれた事に深い感銘を受けるのだった。
そんな明にギターを買ってやりたくなった父親は、明の夏休みに、アルバイトとして自分の鉄瓶作りを手伝わせ、そのお金でギターを買うようにと鋳造所に明を連れ出す。
明が見た父の仕事はきびしいものだった。 神経を張りつめた緻密な鋳型作り、滝のような汗を流す鋳造作業――
やっとアルバイトを終えてお金を握った明だが、父の汗を見た明にはホイホイとその鉄瓶が二つ三つ買える5万数千円のギターは買えなかった。その夜、古いギターを弾く明の脳裡には老人会で自分のギターに感動してくれた老人達の姿が次々と浮び上るのだった。
老人会では、足の不自由な老人たちのためにと、車椅子を買うために零細なお金を貯めているのだった。 数日後、一家は中尊寺に遠足に出かけた。金色堂の巧緻で豪華絢爛たるその内部。
それを見ながら父は、鋳物屋に小僧になったばかりの頃これを見て、何百年も昔の職人のやった事に深い感銘を受け、よし自分も日本一の鉄瓶作りになってやろうと決心した事等を明に話して聞かせる。
やっとアルバイトを終えてお金を握った明だが、父の汗を見た明にはホイホイとその鉄瓶が二つ三つ買える5万数千円のギターは買えなかった。その夜、古いギターを弾く明の脳裡には老人会で自分のギターに感動してくれた老人達の姿が次々と浮び上るのだった。
老人会では、足の不自由な老人たちのためにと、車椅子を買うために零細なお金を貯めているのだった。 数日後、一家は中尊寺に遠足に出かけた。金色堂の巧緻で豪華絢爛たるその内部。
それを見ながら父は、鋳物屋に小僧になったばかりの頃これを見て、何百年も昔の職人のやった事に深い感銘を受け、よし自分も日本一の鉄瓶作りになってやろうと決心した事等を明に話して聞かせる。
その後、弁当を食べながら、明は父に、典子や昇たちが小遣いを貯めて老人会に寄附するのと一緒に自分のアルバイト料も寄附しようと思うと言い出して驚かせる。
明のギターを聞いて喜んでくれた老人達も皆んな父のように汗を流して長い人生を頑張って来た人たちだ、その人達の中に足の不自由な人がいるんだと明は感じたのだ。
心が不安定だった明も、何時の間にか立派に成長してくれたのだ。
「そうか、お前が考えた事だ、お母さんだって反対しないだろう」
「そうか、お前が考えた事だ、お母さんだって反対しないだろう」
と、父は母をふり返った、母も祖母もにこにこしてうなずき合うのだった。
はしゃぎまわる子ども達を先頭に、晴ればれとした笑顔一杯で帰途につく一家に明るい初秋の陽が降り注ぐのだった。
貯蓄増強中央委員会
英映画社
カラー32分
製作 | 服部悌三郎、長井貢 |
脚本・演出 | 青山通春 |
撮影 | 江連高元 |
照明 | 浅見良二 |
美術 | 永沼宗夫 |
音楽 | 真鍋理一郎 |
録音 | 加藤一郎 |
効果 | 小森護雄 |
演出助手 | 鈴木康敬 |
記録 | 槙坪千鶴子 |
現像 | 東洋現像所 |
出演 | なべおさみ、岩本多代、真木小苗、松邨多美夫、大村美樹、吉村光弘、原ひさ子、和沢昌治、稲川善一、益田愛子、飯田テル子、杉本親寛 |
希望の船


希望の船
<内容> 瀬田信子は、長男の高校3年の恵一を学校へ送り出すと、自分も荷物を纏めて家を出た。瀬田家は、大分県国東半島の港を碇汕地にする190屯の貨物船「香徳丸」の船主である。香徳丸の船長が病気のため、船長資格を持っている信子が代りにまた船に乗ることになった。夫の貞夫は機関長で、信子が操縦する香徳丸は港を出航した。
昭和33年頃、信子は当時、瀬戸内海を石炭輸送する木造機帆船の機関夫として働いていた貞夫と結婚した。船は職場であり、又住む家でもあった。
船上生活者の毎日は、陸の人には想像もつかない苛酷なものであった。数年の間に、長女の増子、次女の純子、長男の恵一が生まれた。シケに会い家族もろとも海底の藻屑と消えるような恐ろしい目に何度か会い、子供の養育のためもあって、長女と次女を人に頼んで陸へあげた。夫婦の切なる望みは、小さくても自分の船を持ち、ボロ家でも陸に家を持つことであった。
その頃、貞夫の誠実な人柄を認めていた先輩が、機帆船の購入資金を無利子無担保で貨して呉れ、瀬田夫婦は機帆船の船主になった。昭和40年頃、我が国は高度経済成長時代に入った。そのため、零細海運業者の協業化が進められ、瀬田夫婦は清水の舞台から飛び降りる気持で、大型貨物船の建造に着手した。昭和46年、5千万円近い建造資金を銀行から信用貸しで借り受ける事が出来、「香徳丸」は進水した。やっと夫婦の苦労が実って、信子も陸にあがって子供の養育に専念出来る事になったのも束の間、船員がサラリーマンになってしまい、代りの船員が見つかるまでの半年を信子はまた、中学・小学生の3人の子供を家に残して香徳丸での船上生活を余儀 なくされた。
その頃、貞夫の誠実な人柄を認めていた先輩が、機帆船の購入資金を無利子無担保で貨して呉れ、瀬田夫婦は機帆船の船主になった。昭和40年頃、我が国は高度経済成長時代に入った。そのため、零細海運業者の協業化が進められ、瀬田夫婦は清水の舞台から飛び降りる気持で、大型貨物船の建造に着手した。昭和46年、5千万円近い建造資金を銀行から信用貸しで借り受ける事が出来、「香徳丸」は進水した。やっと夫婦の苦労が実って、信子も陸にあがって子供の養育に専念出来る事になったのも束の間、船員がサラリーマンになってしまい、代りの船員が見つかるまでの半年を信子はまた、中学・小学生の3人の子供を家に残して香徳丸での船上生活を余儀 なくされた。
3人の子供は両親の留守を守り、母の家計簿を下敷にして共同生活を始めた。恵一が子供心にも船乗りになって家の後を継ぐ決意をするなど、あの時期が瀬田家の今日の幸せを築いた試練の時であったと、今にして信子は思うのだった。
今、長女は大学、次女は会社勤め、船員の資格もとった恵一は高校3年生。しかし、信子はなにかと船に乗る事が多く、家族5人が一つ家に集まるのは盆か正月しかない。今年も盆が来て、貞夫もやっと家に帰った。両親は成長した子供達の楽しい語らいに目をうるませる。来年は恵一が香徳丸の船員となる。貞夫の感激は又ひとしおであった。
昔の船上生活を偲ぼうと、家族5人は香徳丸に乗って瀬戸内を走った。母が船長、父が機関長、船員の恵一が操縦する香徳丸は、新たな希望に燃えて瀬戸内海の波を切って進んだ。
昔の船上生活を偲ぼうと、家族5人は香徳丸に乗って瀬戸内を走った。母が船長、父が機関長、船員の恵一が操縦する香徳丸は、新たな希望に燃えて瀬戸内海の波を切って進んだ。
貯蓄増強中央委員会
英映画社
カラー35分
製作 | 服部悌三郎、長井貢 |
脚本・演出 | 堀内甲 |
撮影 | 江連高元 |
照明 | 平野清久 |
編集 | 近藤光雄 |
音楽 | 青山八郎 |
美術 | 川崎軍二 |
記録 | 藤沢すみ子 |
現像 | 東洋現像所 |
録音 | (株)録音処 |
出演 | 原知佐子、前田昌明、杉山とく子、剛達人、中野今日子、片山由美子、手塚学、川野真樹子、宮沢奈穂美、宇山勝樹 |
嫁ぐ我が子に


嫁 ぐ我が子に
<ものがたり>
長野県松本市に住む主婦、伊東和子にとって、現在の幸せは 長い苦労の末やっと手にしたかけ替えのない生活だ。その平穏にふと波立ちを起こしたのが急にもち上った長女の結婚話― 。
長女の靖子はまだ20才になったばかり。職場で知り合った青年との恋愛に気付いたのはつい最近の事だ。
嫁がせるにしても、せめてもう少し世の中がわかってからにしてほしいと母は願う。が青年の転勤を間近かにして、靖子は結婚をあせり、父母の言葉に耳をかそうともしなかった。
思案にくれていた和子は、夫の順平にすゝめられ、靖子をつれて追憶の旅に出た。
その旅で母と娘がたどった追憶とは― ― 。
和子夫婦が結ばれたのは22年前の北海道の炭坑町。幸せだった。しかしその幸せもやがて起ったエネルギー革命の嵐の中で、 あっという間に消え去っていった。
閉山された炭坑をあとに、東京へ出た夫婦を待っていたのは大都会の厳しい生活――。時には追いつめられ、死を思う事さえあった。しかし夫婦は必死に生活を立て直した。
今は廃虚となったかつての炭住街、10数年のうちにすっかり変った東京の下町― ― 。そこには苦難にみちた一家の歴史がきざみこまれていた。
『長い夫婦の歴史には、きっと苦しい、どうにもならない時 もある。そんな時こそ、支えあい、力になりあえる夫婦の愛情、 それを育てようという気構えが、貴女たち2 人の場合にもなければならないと思うの』当時のことをふりかえりながら語る和子。それは本当の夫婦の愛情とは何か、結婚の意味は何かを問いかける言葉であった。
母の愛が靖子をあたゝかく包んだ。
『結婚は、もう少しいろいろなことを勉強してからにする』
旅行から帰って靖子は明るく母に告げた。
そんな娘に、和子は旅が決して無駄ではなかったと思う。そしてこれからも激しく移り変り、社会不安の多い世相であればこそ、恋愛や結婚、そして家庭について、しっかりした考え方を持ってほしいと思う。
やがて嫁ぐわが子に、和子は心からそれを祈るのだった。
文部省特選
教育映画祭文部大臣賞
英映画社
製作 | 高橋銀三郎 |
脚本演出 | 酒井修 |
撮影 | 渡辺勇、千葉寛 |
照明 | 徳永忠 |
音楽 | 小沢直与志 |
録音 | 木村勝己 |
製作担当 | 長井貢 |
現像 | 東洋現像所 |
キャスト | 小田切みき、可知靖之、四方正美、中村瀇二、大山貴子、望月太郎 |