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戸隠の四季

<製作意図>
 長野県・戸隠は観光開発による俗化や自然破壊を免れている数少ない地域である。その神話や伝説が今も肌に感じられるような四季の自然と、素朴な民俗を紹介する中で、私たちがいま、生活環境の中から急速に失ないつつある沢山の貴重なものを再認 識できればと考える。
<内容>
 長野県の北部を形成する山岳・高原地帯の中心に戸隠村がある。厳寒の二月、暁暗の経無山山頂にカメラを立てて、対面する戸隠連峯をみつめている。やがて戸隠連峯の壮大な夜明けのショウが始まった…………。
 冬の戸隠は、やはりスキーに代表される現代的なウインターリゾートだ。ここではホテル・ロッジ・レストランなども広い疎林地帯に点在して、それぞれが個性的ムードをもっているのが印象的だ。若者たちは、雪の峨峨とした連山を背景に、長い冬を爽快な青春の喜びにひたる。しかし華やかな雪の祭典が終り、大地が白いベールを脱ぎ始めると、高原にはカタクリ・キクザキー輪草・リユウキンカ・水バショウが咲き昔のままの自然がかえってくる。
 戸隠山に神話の神々が祭られたのは遠く二千年も前といわれる、平安時代には天台真言の山岳密教が入り、三大霊場の一つとして大いに栄えた。
 村は宝光社、中社、奥社の三社からなる戸隠神社を中心に展開している。祭神はみな天の岩戸神話で活躍する神さまである。村の旅館は戸隠三千坊といわれた頃から続く由緒ある宿坊が多く、その堂々たる構えがここ独特の雰囲気をつくる。
 数百年も続くお神楽や祭、行事がよく保存されており、特産の根曲り竹の細工物や蕎麦など、村人の人情は今も淳朴そのものである。
 戸隠の春は目を洗うばかりの新緑と、全国一数の多い野鳥。飯銅山、大座法師池、 森林植物園と景勝の場はつきない。
 夏はかつての修験者を偲ばせるスリリングな戸隠山登山やキャンピングなどで賑わう。
 秋、錦繍に飾られた山野に、人びとは伝説の美しい女性・紅葉を思いだす。能や歌舞伎で有名な紅葉狩の主舞台は実は戸隠の荒倉山一帯なのだ。地名や遺跡にそのロマンがもつ妖しい雰囲気が色濃く漂っている。 こうして戸隠の四季はあざやかな転換をみせながらめぐってゆく…………。


長野県戸隠村観光協会
英映画社
カラー25分

監督:千石秀夫